区分
経営資源
農業生産工程段階
栽培
調製
品目
共通
分野
食品安全
取組事項
使用する水の水源を確認し、水に含まれる危害要因による農産物の安全性に関する評価と、評価結果に基づく対策を実施。
解説
農産物にとって、水は生育に大きな影響を及ぼします。栽培中に使用する水の汚染は生育不良や農産物の汚染の原因にもなります。
また、収穫後に使用する水が汚染されていると、消費者の健康被害に直接つながる可能性があります。
水に含まれる危害要因とその危害要因による農産物の汚染の可能性を検討する際には、水源が何か、水源の周辺に水を汚染する可能性のある施設等がないか、どのように使用する(散布、土壌かん注、洗浄、手洗い等)水なのか、いつ使用するのか、水に含まれる危害要因が農産物に吸収され可食部に蓄積するのかといったことを確認します。
大雨、洪水、噴火などの自然災害によって、水源が有害な化学物質や微生物によって一時的に汚染される可能性もありますので、水質に影響する災害が発生した際には、都道府県の普及指導員や農業試験場などの助言、協力も得つつ、用水の検査などを実施し、生産される農産物の安全性を評価します。
栽培時のかん水に使う水と農産物の洗浄に使う水では、洗浄水の方がより安全性に気を付ける必要があります。
また、栽培に使う水でも、株元や土壌へのかん水と、生で食べられる野菜(収穫部位)に対する収穫 1 週間以内の潅水や薬剤散布に使われる水では、収穫部位にかかる水の方がより安全性に気を付ける必要があります。
このように、どの時期に、どの場所で、どのように使用するのかによって、求められる水の安全性のレベルは異なります。
収穫後に使用する水(農産物の洗浄水、容器の洗浄水、氷詰め出荷用の氷の生産、等)は農産物汚染を防ぐため水道水等の飲用に適する水を使用します。
井戸水や湧水など水道水以外を使用する場合は、水質検査で安全性を確認した水または消毒した水を使用します。
水をためて、農産物等を洗浄する場合には、水をかけ流す、定期的に全交換するなどして、汚染が広がらないように注意します。
農産物を水拭きする場合も、汚染が広がらないように布巾等を交換、再洗浄等を行って、適切な水質を維持します。
霧吹きなどの水についても同様です。
洗浄水を再利用する場合、ろ過・消毒・殺菌処理を行うなどの汚染防止対策を検討します。
水の放射性物質汚染に関し、行政の調査結果を参考に自らが使用している水源について安全性の検討を行います。
検討の結果、リスクが高いと判断された場合、使用する水を水道水等に変更する、行政に相談するなどの対策を取ります。
きのこ類は、水の中の重金属類(鉛、カドミウム、水銀、ヒ素)を吸収しやすいという研究結果があります。
きのこの種類によって吸収した重金属類の濃縮傾向は異なりますが、可能な限り重金属類を吸収しないように対策を講じます。
使用する水の重金属類の含有量を確認し、飲用に適する水質であることを確認します。
具体例と想定される対策
番号
30-1
【具体例】
栽培中の農産物(収穫部位)に対し、安全性を確認していない水を使用し、収穫後の農産物に有害微生物が残存。
【想定される対策】
使用前に水の濁りや異臭がないことを確認する。
これらに異常があれば、異常のある間は使わない。
特に、生で食べられる野菜(収穫部位)に対し、収穫 1 週間以内に灌水や薬剤散布する場合には、水質検査で安全性を確認(大腸菌が 100 個/100ml 以内が目安)した水、飲用に適する水又は消毒した水を使用するよう努める。
やむを得ず、こうした検査や消毒がされていない水を使う場合には、できるだけ収穫まで日を空ける。
番号
30-2
【具体例】
農産物を洗う水(切口の洗浄や表面の拭取りに使用する水を含む)が、病原性微生物に汚染されることで、農産物の汚染が発生。
【想定される対策】
水源を確認し、水道水以外の場合は水質検査を行う。
飲用可能なレベルであることを維持する。
飲用可能なレベルを維持できない場合は、水道水への切替えや消毒を実施する。
番号
30-3
【具体例】
重金属類を多く含む水のかん水、浸漬により、きのこに重金属類の蓄積が発生。
【想定される対策】
水質検査を実施し、重金属類の含有量を把握する。
重金属類を含まない、含有量の少ない水を使用する。
番号
30-4
【具体例】
おが粉を洗浄、浸漬する井戸水が含有する重金属類を把握せず、培地に重金属類が含まれ、きのこに蓄積が発生。
【想定される対策】
水質検査を実施し、重金属類の含有量を把握する。
重金属類を含まない、含有量の少ない水を使用する。
SDGsへの貢献
(17の目標、169のターゲット)
2.4 生産性を向上させ、生産量を増やし、生態系を維持し、気候変動や極端な気象減少、干ばつ、洪水及びその他の災害に対する適応能力を向上させ、漸進的に土地と土壌の質を改善させるような、持続可能な食料生産システムを確保し、強靭(レジリエント)な農業を実践する。(即ち持続可能な農業を促進する。)
3.9 有害化学物質、ならびに大気、水質及び土壌の汚染による死亡及び疾病の件数を大幅に減少させる。(即ちすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する。)
経営資源
器具、容器、設備、機械・装置及び運搬車両を把握し、安全装備等の確認、衛生管理、使用前点検、使用後の整備及び適切な管理を実施。
1.農林水産業・食品産業の作業安全のための規範(個別規範:農業)の活用農業現場は、他産業と比べて作業事故の発生率が高い傾向にあります。 農業が継続して発展するためには、若者が未来を託せる安全な職場にし… 「続きを読む」
計量機器の点検・校正。
計量機器や水分計、温度計、金属探知機などは正確に計量・測定できなければなりません。 量目不足は商取引上のトラブル、クレームになります。 これを防ぐためには定期的な校正を行い、計量機器を適切に設置・保管… 「続きを読む」
栽培・収穫・調製・運搬に使用する器具・包装容器等や掃除道具及び洗浄剤・消毒剤・機械油等の安全性を確認するとともに、適切な保管、取扱い、洗浄等を実施。
農産物に使用する農薬や肥料、基礎となる土や水の安全性を確保し、携わる作業者の衛生を徹底しても、農産物が接触する可能性のある資材が、食品に適さないものであった場合や衛生管理に問題があった場合には、農産物… 「続きを読む」
機械、装置、器具等の適正な使用。
農業機械や器具等を誤った方法で使用すると作業事故を引き起こしかねません。機械等の操作に従事する際には、取扱説明書の確認等を通じて、当該機械等の危険性や適正な使用方法を理解することが重要です。 取扱説明… 「続きを読む」
食品安全(農産物への接触防止等)、環境保全(環境への流出防止等)、労働安全(火災防止等)に配慮した燃料類の保管の実施。
燃料を不適切に保管、管理すると、燃料が漏出することで、農産物の汚染による食品安全上の事故、火災による労働災害、土壌や水質汚染による環境破壊を引き起こす原因となる可能性があります。 つまり、農場の燃料は… 「続きを読む」
温室効果ガスの削減に資する取組等の対策の実施。
1.現状把握 農業生産活動といえども、化石燃料や電力を消費すれば温室効果ガスである二酸化炭素が発生します。 農場でのエネルギーの使用量を把握し、常に節減を心がけることが重要です。 以下の手順に従って、… 「続きを読む」
農場から出る廃棄物を把握し、適切に分別・管理して処分するとともに、作物残渣等の有機物のリサイクルに取り組むなど廃棄物の削減を実施。
農業生産活動に伴い発生する廃棄物については、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(昭和 45 年法律第 137 号)に基づき、産業廃棄物や事業系一般廃棄物として、法に従い適正な処理を行うことが農業者に… 「続きを読む」
農場内の整理・整頓・清潔・清掃の実施、農業生産活動に伴う廃棄物の不適切な処理・焼却の回避。
農場内を整理、整頓し、常に衛生的にしておくと、汚れや汚染のリスクが明確になるため、農産物の安全性向上に効果があります。 また、作業がしやすくなるので、労働安全の向上、作業効率の向上にもつながります。 … 「続きを読む」
周辺住民等に対する騒音、振動、悪臭、煙・埃・有害物質の飛散・流出等の配慮と対策の実施。
農場を継続的に運営していくためには、周辺の方々の理解が必要です。 まずは自らの農場の周辺環境、住民の方々を把握し、周りの人や施設に迷惑をかけていないか、過去にトラブルとなったことがないか、自治体や自治… 「続きを読む」
ほ場等への鳥獣の接近を制限する取組等による生物多様性に配慮した鳥獣被害防止対策の実施。
生物多様性とは、生物多様性基本法において「様々な生態系が存在すること並びに生物の種間及び種内に様々な差異が存在すること」を意味し、人類もその恩恵を享受しています。 近年の農業の生産効率は化学的な資材や… 「続きを読む」
セイヨウオオマルハナバチの飼養に関する環境省の許可取得及び適切な飼養管理の実施、その他外来生物を利用する場合の適切な飼養管理の実施。
特定外来生物は、海外起源の外来種であって、生態系、人の生命・身体、農林水産業へ被害を及ぼすもの、又は及ぼす恐れがあるものが指定されます。 農業分野では、特定外来生物であるセイヨウオオマルハナバチを使用… 「続きを読む」