食品安全(未熟堆肥との接触による交差汚染防止、農産物への接触防止等)、環境保全(環境への流出防止等)、労働安全(崩落・落下、発熱・発火・爆発防止等)に配慮した肥料等の保管、在庫管理の実施。

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区分

栽培管理

農業生産工程段階

全般

品目

共通

分野

食品安全
環境保全
労働安全

番号

65

取組事項

食品安全(未熟堆肥との接触による交差汚染防止、農産物への接触防止等)、環境保全(環境への流出防止等)、労働安全(崩落・落下、発熱・発火・爆発防止等)に配慮した肥料等の保管、在庫管理の実施。

解説

肥料等(葉面散布剤、堆肥、土壌改良材、微生物資材等も含む)を適切に保管しないと、肥料の固化、劣化が進み、包装が傷んで漏洩する、崩れやすくなる等のリスクが高まります。
その結果、農産物や環境を汚染する危険性が高まるとともに、作業者の安全性にも影響があります。
環境面では、肥料が漏れれば窒素等による水源汚染などの悪影響が生じます。
食品安全の面では、肥料等が農産物や収穫・取扱関連の機械・器具等と接触して汚染の原因にもなります。
未熟な堆肥(病原性微生物が未殺菌の可能性)と完熟堆肥との交差汚染が生じれば、堆肥使用を原因とする農産物等の汚染が起こるおそれがあり、それにより大きな食中毒事件が発生する可能性があります。
その他、こぼれた有機質肥料に小動物や虫が集まり、さらに肥料袋を食い破られたり、周囲が汚染されたりすることもあります。
地面からの湿気や雨等により、肥料が固まり、カビが生えるなど品質の変化・劣化が起こる場合もあります。
大量に肥料を保管する場合、肥料袋を不安定に積むことは作業者を巻き込む崩落事故の原因になります。
また、こぼれた肥料に接触し、かぶれ、化学物質による火傷等の被害が出る場合があります。
こうした事故のリスクを低減するため、適切な管理方法として以下のようなことに取り組みます。
① 肥料が日光、霜、雨、外部から流入する水の影響を受けないようにするため、雨が吹き込んできたり、雨漏りしたりしない覆いがある保管場所を選びます。肥料袋に直射日光が当たると袋が劣化して破れる可能性があります。シートをかけるなど日が当たらない工夫をします。
② 入出庫のたびに清掃するなど、肥料等の保管場所はごみやこぼれた肥料がないようにし、その都度、袋等の劣化がないか確認します。
③ 地面からの湿気を防ぐため、肥料等をパレットの上に載せるなど直接土の上に置かないようにします。
④ 農薬入り肥料、石灰窒素など農薬登録のあるものは、他の肥料等と区別して管理します。
⑤ 堆肥を保管する場合、流出、浸出液による水源汚染を防ぐため、床を不浸透性材料(コンクリート等)で作る、漏水しないように溝を設ける、風雨を防ぐ覆いや側壁を設ける、シートをかける等の対策を講じます(番号 61 も参照)。
⑥ 原料の家畜糞や製造途中の堆肥と、完成した堆肥との接触を防ぎます。

肥料には発熱・発火・爆発を起こす可能性のあるものが含まれます。
それらの中には、消防法で保管量や保管方法が規制されているものもあります。その場合、保管量によっては消防署に届出が必要な場合があり、火災などの事故を防ぐため安全な方法で保管します。
① 保管している肥料(保管する予定の肥料)に硝酸アンモニウム、硝酸カリウム、硝酸カルシウム、硫黄粉末、生石灰が含まれるかどうか確認します。
② 上記の肥料がある場合、販売店あるいはメーカーに保管方法を確認し、指導に従って適切な保管を行います。
③ 保管量によっては規制の対象となる場合があるので、保管量について相談しま
す。硝酸カリウムの中には粒状になっていて消防法の対象外のものもあります。
④ 保管量が規制の対象となっている場合、消防署の指示に従って届出を行います。
十分な保管条件を整えたら、在庫管理を行います。
適切に在庫を管理することにより、計画的に肥料を購入できるようになり、過剰在庫を防止できます。

肥料使用記録と連動させ、肥料を適正に使用していることを説明することが可能になります。
① 肥料等ごとの入庫量、出庫量、日付がわかる在庫台帳を用意し、入出庫ごとに記帳します。
② 納品された肥料等を、すぐに全量使ってしまう場合、納品書に使用日を記載し保管します。
③ 自家製の堆肥など、袋詰めされていないものの場合、2t トラック 2 台分、マニュアスプレッダー3 回分といった、分かる範囲で工夫して記録します。
これらのことを遵守し、適切に保管、在庫管理し、肥料等に起因する様々な事故のリスクを低減します。

具体例と想定される対策

番号

65-1

【具体例】

肥料袋の破れ、劣化により肥料がこぼれ、農産物や水源等の汚染が発生。

【想定される対策】

肥料は直射日光、雨の当たらない倉庫に保管する。
保管場所を定期的に清掃する。
肥料を地面に直置きしない。

番号

65-2

【具体例】

肥料袋の破れ、劣化によるカビ、小動物、虫が発生。

【想定される対策】

肥料は直射日光、雨の当たらない倉庫に保管する。
保管場所を定期的に清掃する。
肥料を地面に直置きしない。
肥料の出入庫に際し、肥料袋に傷みがないか確認する。
傷んだ肥料袋は、漏れないように補修する。
傷んだ肥料を処分する。

番号

65-3

【具体例】

肥料を重複して購入し、不良在庫が発生。

【想定される対策】

肥料の在庫管理により、購入を決定する。

番号

65-4

【具体例】

在庫が過剰になり、品質が劣化した肥料が大量に発生。

【想定される対策】

肥料の在庫管理により、購入を決定する。
定期的に棚卸を行う。

番号

65-5

【具体例】

肥料の放置により、農産物に汚染が発生。

【想定される対策】

肥料は専用の保管場所を指定し、集中して管理する。
定期的な巡回により、農場内に肥料が放置されていないか確認する。

SDGsへの貢献
(17の目標、169のターゲット)

2.4 生産性を向上させ、生産量を増やし、生態系を維持し、気候変動や極端な気象減少、干ばつ、洪水及びその他の災害に対する適応能力を向上させ、漸進的に土地と土壌の質を改善させるような、持続可能な食料生産システムを確保し、強靭(レジリエント)な農業を実践する。(即ち持続可能な農業を促進する。

3.9 有害化学物質、ならびに大気、水質及び土壌の汚染による死亡及び疾病の件数を大幅に減少させる。(即ちすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する。

6.3 汚染の減少、投棄廃絶と有害な化学物や物質の放出の最小化、未処理の廃水の割合半減及び再生利用と安全な再利用の世界的規模での大幅な増加により、水質を改善する。(即ち水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する。

6.6 山地、森林、湿地、河川、帯水層、湖沼などの水に関連する生態系の保護・回復を行う。(即ち水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する。

14.1 海洋堆積物や富栄養化を含む、特に陸上活動による汚染など、あらゆる種類の海洋汚染を防止し、大幅に削減する。(即ち持続可能な開発のために海洋・海洋資源を保全する。

12.4 合意された国際的な枠組みに従い、製品ライフサイクルを通じ、環境上適正な化学物質やすべての廃棄物の管理を実現し、人の健康や環境への枠組みを最小化するため、化学物質や廃棄物大気、水、土壌への放出を大幅に削減する。(即ち持続可能な生産消費形態を確保する。

国際水準GAP
食料・農業・農村基本計画(令和2年3月閣議決定)に掲げる「令和12年までにほぼ全ての産地で国際⽔準GAPを実施」の実現

このページの内容は、農林水産省「国際水準GAPガイドライン」を引用しています。
下記URLに掲載されています。
国際水準GAPガイドライン:農林水産省https://www.maff.go.jp/j/seisan/gizyutu/gap/gap_guidelines/index.html


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