区分
栽培管理
農業生産工程段階
全般
品目
共通
分野
食品安全
取組事項
農薬の責任者による農薬適正使用の指示と検証。
解説
農薬取締法において、農薬使用者は、農薬の使用に当たっては、農薬の安全かつ適正な使用に関する知識と理解を深めるように努めることが求められています。しかしながら、十分な知識を持たない作業者により調製の順番や希釈倍数を間違った散布が行われる可能性もあります。
こうした事故を防ぐため、農薬に関する責任者を決め、その責任者が防除を一元的に管理、指示する体制を整え、農薬散布の重複や散布漏れ、間違った農薬の散布などを防ぎます。
農薬に関する責任者が農薬使用計画に基づき、作業者に対して農薬使用を指示します。
責任者が散布する農薬名、希釈倍数、散布量、対象ほ場、対象品目等を記載した農薬散布指示書を作成し、作業者がその指示書に従って作業を確実に行えば、使用基準違反は防げます。
天候不順などにより予想外の病害虫が発生し、農薬リストに記載されていない農薬を使う場合にも、農薬に関する責任者が信頼できる機関に相談するなどして使用に問題がないか確認し、作業者に指示を出すようにします。
こうした体制を整備すれば、リスクを低減することができます。
このように、防除作業を適切に工程管理していれば、残留農薬の事故を起こすリスクは低減されます。
加えて、実践してきた工程管理を、漏れがないか、間違いはないか検証することにより、そのリスクをさらに下げることができます。
つまり、農薬の使用計画 → 適切な準備作業 → 適切な使用 → 後片付け → 保管及び在庫管理の工程に、間違いがないか、農場の農薬に関する責任者が確認する作業に取り組むことが必要です。
具体的には、農薬に関する責任者が、出荷の前に農薬使用の記録を確認し、間違った農薬使用がないか(希釈倍数や収穫前日数などが適切か)、在庫記録と照合し、使用量に誤りがないかを調べます。
農薬に関する責任者や農薬の使用者は、十分な知識を持たない作業者により間違った農薬を使用したり、使用方法を間違えたりするリスクを下げるために活動します。
農薬に関する責任者は、新薬や最新の防除体系、登録の失効や使用基準の変更など、農薬に関する最新の情報を入手し、知識や技量の向上を図りましょう。
具体例と想定される対策
番号
60-1
【具体例】
不適切な農薬の工程管理による残留農薬の事故が発生。
【想定される対策】
農薬の工程管理が適切か確認する。
番号
60-2
【具体例】
農薬散布作業の漏れがあり、病虫害の被害が拡大。
【想定される対策】
農薬使用計画に基づき、農薬に関する責任者により農薬散布を指示する。
農薬に関する責任者が、日々の散布記録を確認する。
番号
60-3
【具体例】
計画外農薬の使用による残留農薬基準違反が発生。
【想定される対策】
予定外の農薬について番号 52 の計画を修正し、登録の有無等の適切性を確認する。
必ず登録内容の確認後に使用する。
農薬リストに組み入れる。
SDGsへの貢献
(17の目標、169のターゲット)
2.4 生産性を向上させ、生産量を増やし、生態系を維持し、気候変動や極端な気象減少、干ばつ、洪水及びその他の災害に対する適応能力を向上させ、漸進的に土地と土壌の質を改善させるような、持続可能な食料生産システムを確保し、強靭(レジリエント)な農業を実践する。(即ち持続可能な農業を促進する。)
3.9 有害化学物質、ならびに大気、水質及び土壌の汚染による死亡及び疾病の件数を大幅に減少させる。(即ちすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する。)
12.4 合意された国際的な枠組みに従い、製品ライフサイクルを通じ、環境上適正な化学物質やすべての廃棄物の管理を実現し、人の健康や環境への枠組みを最小化するため、化学物質や廃棄物大気、水、土壌への放出を大幅に削減する。(即ち持続可能な生産消費形態を確保する。)
栽培管理
信頼できる供給元からの適正な手段による種苗の入手、育苗の管理及び種苗の調達に関する記録の保管。
農業における健全な種苗(種子、苗、種菌)の入手、育成は経営上、重要な工程です。 種苗の入手・育苗を管理、記録し、見直せるようにすることが大切です。 また、育苗品種を指定して育苗を外部委託している場合に… 「続きを読む」
隣接ほ場からの農薬ドリフトの影響の回避。
農薬の工程管理を検討する上で、自らのほ場・農産物に対し、周辺で使用される農薬からの影響があるか、ドリフトの危険性について調べます。 ドリフトの影響が懸念される場合には、周辺の農薬使用者とコミュニケーシ… 「続きを読む」
病害虫・雑草の対応(IPMにおける「予防」、「判断」、「防除」)
IPM とは、Integrated Pest Management の略称であり、「総合的病害虫・雑草管理」などと訳します。 IPM は、 ①病害虫・雑草が発生しにくい生産条件の整備(IPM の「予防… 「続きを読む」
使用する予定の農薬の情報をまとめ、使用基準違反を防ぐ農薬使用計画を策定。
農薬を使用する際には、「農薬取締法」に基づく登録を受けたもの、かつ、有効期限内のものを使用する必要があります。 食品の安全を守り、周辺環境に配慮して農薬を適正に使用するため、まず、農場で使用する予定の… 「続きを読む」
農薬使用計画に基づき、適正に農薬を使用するとともに、使用前に使用濃度や散布方法など、適正な使用方法の再確認を実施。
農薬を使用する際には、農薬ラベルに適用作物、使用回数、使用量、希釈倍数、収穫前日数、使用上の注意事項や被害防止方法等が記載されていますので、必ず確認しましょう。 「農薬取締法」では、容器又は包装にある… 「続きを読む」
農薬は、周辺環境を汚染しない場所で必要な量だけ調製し、使用した計量機器等の洗浄を適切に実施。
散布作業前に、防除の準備を整えます。 まず、防除器具等が適切に動作するか、事前に確認し、詰まりや前回使用した農薬が残っていないか点検します。 次に、農薬の調製時は最も濃度が高い、原液に接触する危険があ… 「続きを読む」
農薬散布時における周辺作物・周辺住民等への影響の回避。
農薬散布時に、隣接するほ場等の作物に農薬がかかると、作物の生長に悪影響が出たり、残留農薬基準値の超過の原因になったりする可能性があります。 また、周辺の民家等へ農薬が飛散してしまうと周辺住民に健康被害… 「続きを読む」
農薬の容器等の表示内容を確認し、表示に基づく安全な作業を行うための装備を整え、調製、防除、片付け作業を行い、防除衣、保護装備等を適切に洗浄、乾燥し、他への汚染がないように保管。
農薬によっては、農薬散布液を吸引したり、皮膚に付着したりすると健康被害が発生する恐れがあります。 したがって、農薬容器又は包装にあるラベルの表示内容を確認し、表示内容に基づく安全に作業を行うための服装… 「続きを読む」
農薬使用前に防除器具を点検し、使用後に適切に残液を処理、十分に洗浄し、洗浄排液を処理。
防除作業の前には、防除に使用する機械・器具を点検します。正常に稼働するか、通水できるか、撹拌機に故障はないか、試運転を行います。 防除機械・器具が正常に稼働しないと、計算値より濃度が高くなったり、飛散… 「続きを読む」
農薬の使用記録の作成・保存。
農薬を使用する者が遵守すべき基準を定める省令(平成 15 年農林水産省・環境省令第 5 号)では、農薬使用者は、農薬を使用した時は、次に掲げる事項を帳簿に記載するように努めなければならないと定めていま… 「続きを読む」