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  • 事故や災害等に備えた農業生産の維持・継続のための対策の実施。

    区分

    リスク管理

    農業生産工程段階

    全般

    品目

    共通

    分野

    農場経営管理

    番号

    15

    取組事項

    事故や災害等に備えた農業生産の維持・継続のための対策の実施。

    解説

    GAP に取り組むと、事故が起こる可能性や程度は小さくなりますが、リスクがゼロになることはありません。
    また、発生の予想が難しい自然災害等に遭遇する可能性もあります。
    近年、自然災害(台風・大雪)等が多発しており、そうした災害等が発生した場合においても、企業や組織にとって、損害を最小限に抑え、事業の継続や早期復旧を図ることは非常に重要です。
    そのためには、中核となる事業を継続させたり、可能な限り短時間で事業を復旧させたりするための方法、手段などをあらかじめ取り決めておく BCP(事業継続計画)を策定しておくことが有用です。
    そうした中、農業者の皆様が自然災害等への備えに取り組みやすいものとなるよう、農林水産省において「自然災害等のリスクに備えるためのチェックリスト」と「農業版 BCP(事業継続計画書)」フォーマットを作成しているので、こうしたフォーマットを活用しながら事前に対策を考え、事故や災害等に備えましょう。
    また、万が一の事態への備えとして、保険を利用することも検討しましょう。
    農林水産省では、収入保険と農業共済の 2 つの農業保険を用意しています。
    農業保険は公的な保険であり、保険料の一部を国が補助しています。
    収入保険は、原則全ての農産物を対象に、自然災害や価格低下だけでなく、農業者の経営努力では避けられない収入減少を広く補償します(青色申告を行っている方が対象)。
    また、農業共済は、米、麦、畑作物、果樹、家畜、農業用ハウスなどが自然災害によって受けた損失を補償します(全ての農業者が対象)。
    事故発生時の農協の共済、車両の保険など、民間の保険も検討し、リスクに見合った補償を得られる仕組みを整えておきましょう。
    また、日本では、農産物は製造物責任法(PL 法)の対象外(農産加工品は対象)ですが、農産物を輸出する際は、輸出相手国側で対象に含まれている場合がありますので注意が必要です。
    また、農産物は PL法の対象外であっても、生産した農産物を原因とする食中毒が生じた場合には、被害者、出荷先、納入先に対して民法上の損害賠償責任を負う可能性があります。
    そうした食中毒発生時の賠償責任に備えた民間の保険への加入も検討します。

    具体例と想定される対策

    番号

    15-1

    【具体例】

    台風により倉庫が浸水し、農産物が出荷不能。

    【想定される対策】

    収入保険に加入する。
    農業保険による補償の適用を受ける。

    番号

    15-2

    【具体例】

    自然災害に遭遇後、復旧に時間がかかり、事業再開が遅延。

    【想定される対策】

    「自然災害等リスクに備えるためのチェックリスト」を活用するなどして、リスクマネジメントの実施や事業継続計画(BCP)の策定を行う。

    番号

    15-3

    【具体例】

    事故により従事者作業に従事できない事態が発生。

    【想定される対策】

    他の従業員が兼務できるよう、普段から業務のシェアを実施する。

    SDGsへの貢献
    (17の目標、169のターゲット)

    2.4 生産性を向上させ、生産量を増やし、生態系を維持し、気候変動や極端な気象減少、干ばつ、洪水及びその他の災害に対する適応能力を向上させ、漸進的に土地と土壌の質を改善させるような、持続可能な食料生産システムを確保し、強靭(レジリエント)な農業を実践する。(即ち持続可能な農業を促進する。

    13.1 すべての国々において、気候関連災害や自然災害に対する強靭性(レジリエンス)及び適応力を強化する。(即ち気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる。

    国際水準GAP
    食料・農業・農村基本計画(令和2年3月閣議決定)に掲げる「令和12年までにほぼ全ての産地で国際⽔準GAPを実施」の実現

    このページの内容は、農林水産省「国際水準GAPガイドライン」を引用しています。
    下記URLに掲載されています。
    国際水準GAPガイドライン:農林水産省https://www.maff.go.jp/j/seisan/gizyutu/gap/gap_guidelines/index.html

  • クレーム及び農場のルール違反への対応手順を定め、実施し、記録を作成・保存。

    区分

    リスク管理

    農業生産工程段階

    全般

    品目

    共通

    分野

    農場経営管理

    番号

    14

    取組事項

    クレーム及び農場のルール違反への対応手順を定め、実施し、記録を作成・保存。

    解説

    クレームが発生した時には、できる限り迅速に対応します。
    そのため、クレームの受付から、原因の調査、事後対応を決めるための手順を明確にしておきます。
    受付からクレームの分類、即時の対処、原因調査、連絡や補償、回収等の対応、再発防止の検討など、具体的な手順を定めたら実際に機能するかテストを繰り返します。
    テストを繰り返すことによって、手順の欠陥(例えば責任者不在の場合は、回収判断ができない等)を洗い出し、実際に役立つ手順に見直します。
    一方、内部で気付いた、発覚した農場のルール違反についても、迅速に処置できるよう手順を定めておきます。
    まず違反により生じる農場経営に及ぼすリスクの程度の判断、続いて程度によって、違反に対する口頭での注意、再教育、ルール違反時の農産物の再検品、廃棄、回収等の処置、ルールの見直しなど、具体的な手順を定め、実際に機能するかテストを繰り返します。
    こうしたクレーム及び農場のルール違反の発生時に、迅速かつ適切に事後対応措置をとらないと、農場は信用を失いかねません。
    その場しのぎに終わらせることなく原因を追及し、再発防止に活用します。
    問題が発生してから対応手順を考えていては間に合いません。
    事前に、クレーム及び農場のルール違反に対応するための手順を明確にしておきましょう。
    なお、法令違反に該当する可能性がある場合には、必ず規制当局等の関係機関に連絡、相談をします。
    クレーム対応の手順については、以下を参考にしてください。
    ① クレームや商品に関する異常の発生時に、誰に連絡するか決めておく
    ② 状況及び影響の把握(商品回収の必要性の判断を含む)
    ③ 応急対応(影響がある出荷先及び関係機関への連絡・相談・公表、商品回収、不適合品の処置等を含む)
    ④ 原因追及
    ⑤ 再発防止策の検討
    ⑥ 取られた再発防止策の効果に対する検証
    ⑦ 商品回収等のテスト
    農場のルール違反が発覚した場合の手順については、以下を参考にしてください。
    ① 状況及び影響の把握
    ② 応急対応(影響がある出荷先及び関係機関への連絡・相談・公表等を含む)
    ③ 原因追及
    ④ 是正処置
    GAP では、農場内の作業の手順(農場のルール)を定め、遵守することにより食品安全や労働安全などを確保します。
    つまり、農場のルールが守られなかった場合には、食品安全や労働安全などが脅かされていることになります。
    そのため、農場のルール違反への対応手順も前もって用意しておきましょう。

    具体例と想定される対策

    番号

    14-1

    【具体例】

    商品の腐敗によるクレームが発生したが処置に時間を要し取引を停止される事案が発生。

    【想定される対策】

    商品のクレーム対応の手順を明確にする。
    手順に基づき、原因追及、再発防止策を検討し、取引先に迅速に報告する。
    クレーム対応の手順が機能するか、処置にどれほど時間を要するか、テストを行う。
    テスト結果を活用し、手順を見直す。

    番号

    14-2

    【具体例】

    農場の手洗いルールを守っていない作業者に対し、違反として処置しなかったため違反を繰返し、農産物の汚染事故が発生。

    【想定される対策】

    農場のルール違反を発見、指摘された場合の処置を明確にする。
    農場のルールを周知徹底する。
    事故発生時は原因追及と再発防止策の検討により再発を防ぐ。

    番号

    14-3

    【具体例】

    農場のヘルメット着用のルールを守らない作業者に対し、違反として処置しなかったため、農作業事故が発生。

    【想定される対策】

    農場のルール違反を発見、指摘された場合の処置を明確にする。
    農場のルールを周知徹底する。
    事故発生時は原因追及と再発防止策の検討により再発を防ぐ。

    SDGsへの貢献
    (17の目標、169のターゲット)

    2.4 生産性を向上させ、生産量を増やし、生態系を維持し、気候変動や極端な気象減少、干ばつ、洪水及びその他の災害に対する適応能力を向上させ、漸進的に土地と土壌の質を改善させるような、持続可能な食料生産システムを確保し、強靭(レジリエント)な農業を実践する。(即ち持続可能な農業を促進する。

    12.8 人々があらゆる場所において、持続可能な開発及び自然と調和したライフスタイルに関する情報と意識を持つようにする。(即ち持続可能な生産消費形態を確保する。

    国際水準GAP
    食料・農業・農村基本計画(令和2年3月閣議決定)に掲げる「令和12年までにほぼ全ての産地で国際⽔準GAPを実施」の実現

    このページの内容は、農林水産省「国際水準GAPガイドライン」を引用しています。
    下記URLに掲載されています。
    国際水準GAPガイドライン:農林水産省https://www.maff.go.jp/j/seisan/gizyutu/gap/gap_guidelines/index.html

  • 食品安全を確保するための資材等の供給者及び検査機関を含むサービス提供者の評価及び選定に係る方法を定めて実施。

    区分

    リスク管理

    農業生産工程段階

    全般

    品目

    共通

    分野

    農場経営管理

    番号

    13

    取組事項

    食品安全を確保するための資材等の供給者及び検査機関を含むサービス提供者の評価及び選定に係る方法を定めて実施。

    解説

    農場は単独で生産工程を管理しているわけではなく、外部事業者が提供するサービスや資材等を利用して農産物の生産に当たっています。
    一つは、外部の検査分析機関です。農場での生産工程管理のためのルールを定め、そのとおりに実行しても、そもそもルールを策定する際に利用した情報やデータが誤っていた場合や、ルールの内容が不十分な状態では、事故を未然に防ぐことができません。
    そのため、信頼できる外部分析機関等を活用して、農産物の残留農薬や放射性物質、病原性微生物、重金属等の検査、土壌や水質の分析等を行って、工程管理が必要かどうか、ルールの内容や効果が十分か、法令で定められた基準や仕様書等に適合しているかどうか、科学的な根拠に基づいて検証することが必要です。
    外部の検査分析機関については、信頼できる検査機関として厚生労働省の登録検査機関や試験所認定の国際規格であるISO/IEC 17025 の認定機関を活用します。
    もう一つは、資材等の購入先や、エネルギー等の供給事業者、取引先です。
    農業を行う上では様々な原料・資材、エネルギーを購入し、使用します。
    その原料・資材の安全性や安定性、エネルギー等の安定供給に問題があった場合、安全な農産物を安定的に生産できません。
    適切な原料・資材、エネルギー等を安定して調達するために、信頼できる事業者から仕入れることが必要です。
    資材やエネルギーの取引先に関しては、安全性の担保や安定供給できる事業者かどうか、関係法令等に基づいて登録されている事業者かどうか、信頼性を評価します。
    行政からの情報、周辺農業者、同業者からの評価等を参考に、信頼できる業者を選定し、選定した業者に、問題が発生していないか継続的に情報を収集、評価します。

    具体例と想定される対策

    番号

    13-1

    【具体例】

    仕入先業者の経営が危なくなり資材の納品が遅滞。

    【想定される対策】

    行政からの情報や同業者等からの情報入手を怠らない。

    番号

    13-2

    【具体例】

    残留農薬検査値の間違いにより、残留農薬基準違反を見過ごす事故が発生。

    【想定される対策】

    ISO17025 認定機関、厚生労働省登録検査機関である検査機関に分析を依頼する。
    検査機関の登録、認証の範囲を確認する。

    番号

    13-3

    【具体例】

    取引先の乱雑な取扱いにより、農産物に破損事故が発生。

    【想定される対策】

    取扱いに関する契約書、覚書等を締結する。
    取引先の作業の状況を定期的に点検する。
    作業の状況の記録、提出を求める。
    事故が発生した場合の処置を合意しておく。

    番号

    13-4

    【具体例】

    取引先の倉庫での管理が不十分なため、農産物の盗難が発生。

    【想定される対策】

    保管に関する契約書、覚書等を締結する。
    取引先の保管の状況を定期的に点検する。
    保管の状況の記録、提出を求める。
    事故が発生した場合の処置を合意しておく。

    SDGsへの貢献
    (17の目標、169のターゲット)

    2.4 生産性を向上させ、生産量を増やし、生態系を維持し、気候変動や極端な気象減少、干ばつ、洪水及びその他の災害に対する適応能力を向上させ、漸進的に土地と土壌の質を改善させるような、持続可能な食料生産システムを確保し、強靭(レジリエント)な農業を実践する。(即ち持続可能な農業を促進する。

    17.17 様々なパートナーシップの経験や資源戦略をもとにした、効果的な公的、官民、市民社会のパート
    ナーシップを奨励・推進する。(即ち持続可能な開発のための実施手段を強化する。

    国際水準GAP
    食料・農業・農村基本計画(令和2年3月閣議決定)に掲げる「令和12年までにほぼ全ての産地で国際⽔準GAPを実施」の実現

    このページの内容は、農林水産省「国際水準GAPガイドライン」を引用しています。
    下記URLに掲載されています。
    国際水準GAPガイドライン:農林水産省https://www.maff.go.jp/j/seisan/gizyutu/gap/gap_guidelines/index.html

  • 農業生産工程管理の信頼性を確保するための農場のルールに基づく管理を遵守することについての外部委託先との合意。

    区分

    リスク管理

    農業生産工程段階

    全般

    品目

    共通

    分野

    農場経営管理

    番号

    12

    取組事項

    工程管理の信頼性を確保するための農場のルールに基づく管理を遵守することについての外部委託先との合意。

    解説

    農場で農産物を生産し、取引先に納品するまでの間、外部の事業者等に工程の一部を委託することがあります。
    その場合、農場の経営者又は責任者は、工程を委託する事業者が農場のルールを遵守できる能力を有しているか評価し、実際に遵守していることを点検・確認することを、委託先に合意してもらうことが重要です。
    また、農作業等を支援するサービスの提供事業者が表示すべき情報等の指針を定めているので、こういった情報も活用しながら委託する事業者を選択しましょう。
    例えば、農場では GAP をしっかり行っていたとしても、外部委託した工程の衛生管理が不十分では、食品安全を確保することはできません。
    そこで、外部委託先に対しても、食品安全、労働安全、環境保全等の各分野について、GAP に基づいて農場が策定したルールに基づく管理を行ってもらうことが必要です。
    どの工程を委託するのか、食品安全、労働安全、環境保全等を確保するためにどのような対応(ルール)を行うのか、ルールに違反した場合の措置、定期的な点検の受入れなどを取り決めた契約を農場と外部委託先で交わします。
    農場の責任者は、契約に基づき、定期的に外部委託先に赴き、ルール通り作業を行っているか確認・点検します。
    適切な作業を行っていない場合は改善を要求します。
    なお、GAP 認証の審査では、審査機関が外部委託先を審査する場合もあります。
    審査の際には、外部委託先にそのことを伝達しておきましょう。

    具体例と想定される対策

    番号

    12-1

    【具体例】

    外部委託先の管理不足による異物混入事故が発生。

    【想定される対策】

    委託する工程を明示し、衛生管理(食品安全の確保)の手順を守る合意を得る。
    定期的に遵守状況を確認する。

    番号

    12-2

    【具体例】

    外部委託先が決められた手順を守らなかったことによる、農産物の汚染事故が発生。

    【想定される対策】

    外部委託先に赴き、決められた手順で作業をしているか確認する。
    外部委託先が作成している記録を確認する。

    SDGsへの貢献
    (17の目標、169のターゲット)

    2.4 生産性を向上させ、生産量を増やし、生態系を維持し、気候変動や極端な気象減少、干ばつ、洪水及びその他の災害に対する適応能力を向上させ、漸進的に土地と土壌の質を改善させるような、持続可能な食料生産システムを確保し、強靭(レジリエント)な農業を実践する。(即ち持続可能な農業を促進する。

    17.17 様々なパートナーシップの経験や資源戦略をもとにした、効果的な公的、官民、市民社会のパート
    ナーシップを奨励・推進する。(即ち持続可能な開発のための実施手段を強化する。

    国際水準GAP
    食料・農業・農村基本計画(令和2年3月閣議決定)に掲げる「令和12年までにほぼ全ての産地で国際⽔準GAPを実施」の実現

    このページの内容は、農林水産省「国際水準GAPガイドライン」を引用しています。
    下記URLに掲載されています。
    国際水準GAPガイドライン:農林水産省https://www.maff.go.jp/j/seisan/gizyutu/gap/gap_guidelines/index.html

  • 出荷する商品の表示の管理及び収穫記録と結びついた農産物の出荷記録、それ以外の農場の管理等に関する記録の作成・保存。

    区分

    リスク管理

    農業生産工程段階

    出荷

    品目

    共通

    分野

    農場経営管理

    番号

    11

    取組事項

    出荷する商品の表示の管理及び収穫記録と結びついた農産物の出荷記録、それ以外の農場の管理等に関する記録の作成・保存。

    解説

    出荷する農産物には、食品表示法に基づき適正に名称及び原産地を表示します。さらに、納品・取引先には、農場名、商品の情報(数量、規格等)、出荷日もしくは納品日を情報として提供します。
    この農場名と出荷日は、取引先からの問い合わせに答えられるよう、各種記録に紐づけます。
    クレームが発生した場合、再発防止のための原因の追及と、被害を最小限に食い止めるために出荷した農産物の回収が必要になります。
    そのために記録を紐づけ、トレーサビリティを確保します。
    トレーサビリティには 2 つの方向があり、ひとつは、事故品から原因となった作業、場所等を特定するために記録を使って辿る作業です。
    もうひとつは、原因となった作業、場所と同じロットの農産物をどこに出荷したか、記録を使って辿る作業です。
    この双方向を辿ることができてはじめてトレーサビリティが確保されている状態になります。
    農産物と出荷、出荷と収穫、収穫と栽培(防除、施肥、種苗管理等)の記録を日付やほ場名、品種名等で紐づけ、付帯する衛生管理(作業者の体調、手洗い、消毒液濃度等)、品質管理(温度や湿度、保管期間等)の記録とも関連付けることができれば、出荷した農産物の詳細な履歴を辿ることができるようになります。
    なお、クレーム対応や商品回収の範囲を決めるために、出荷、収穫の記録について1 ロットをどのように設定するかが重要です。1 日 1 ほ場を 1 ロット、1 日複数ほ場を 1 ロット、複数日 1 ほ場を 1 ロットなど、農場によって考え方は異なります。ロットの単位を小さくすればするほど、日頃の記録は多くなりますが、問題発生時の原因特定がしやすくなり、出荷停止や回収の範囲は最小限にとどめられます。
    ロット単位を大きくすれば、日頃の記録はしやすいですが、問題発生時に出荷停止、回収の範囲が大きくなってしまいます。
    バランスの取れたロット単位を設定する必要があります。
    経営方針に従ってロットの考え方を決めたら、日数やほ場の単位=ロットごとの収穫量、そして調製作業による廃棄量を記録します。
    こうした一連の記録により、製品の歩留り、秀品率等を把握できるようになりますし、計画と実績を比較し、次期作の計画を立てる際や経営改善にも役立てることが可能になります。
    農場では、他の農場の生産工程の一部を請け負うこと、委託すること、また他の農場の農産物を購買して販売、流通することもあります。
    その場合、他農場の農産物と自農場の農産物とが混ざらないように識別(農場の別を表示)するか、混合したことを記録する必要があります。
    生産工程の一部を外部に委託する場合には、農産物のうち、どれが外部に委託したものか、把握できるようにしておきます。
    具体的には、定植するほ場を分ける、定植日・収穫日を分ける、委託する品種と自作する品種を分けるなどします。
    こうすることで、外部委託先がこちらの要求通りの栽培管理の能力を有するか、評価することができます。
    また、外部委託又は購入した農産物=出荷物については、品種別に分ける、出荷先を分ける、伝票や包装に荷印を付けるなどして、識別できるようにしておきます。
    外部には識別できない方法でも構いません。
    もちろん、農場の農産物と、購入又は外部委託した農産物を混合して出荷しても構いませんが、その場合、出荷した農産物へのクレームが、農場の管理によるものなのか、購買先・外部委託先の管理能力によるものなのか、判別できなくなります。
    混合する場合は、そのまま農場の責任としてクレームに対応する覚悟が必要です。
    農産物の出荷や収穫等に係る記録は、番号 7 と同様、一定期間保管しましょう。

    具体例と想定される対策

    番号

    11-1

    【具体例】

    農産物へのクレームに対し記録を辿ることができず、原因を把握することができなかったため、次期作でも同種の事故が再発。

    【想定される対策】

    出荷する商品の段ボール、袋やフィルムに農場名を記載する。
    出荷伝票に農場名と日付を記載する。
    出荷伝票の日付と農産物の調製、収穫、栽培等の記録を紐づける。
    トレーサビリティが確保されているか、記録を辿って確認する。

    番号

    11-2

    【具体例】

    食品安全にかかわる事故が発生したほ場を特定できなかったため、全ほ場の農産物の出荷を一定期間停止。

    【想定される対策】

    トレーサビリティが確保されているか、出荷記録、収穫記録、栽培・防除記録を使って照合可能か、日常的に点検する。
    辿ることができない記録を把握し、補充、追加する。
    回収対象の範囲と損失を考慮し、ロットの単位を決定する。
    出荷記録と紐づく調製作業、収穫記録、防除記録を作成し保管する。

    番号

    11-3

    【具体例】

    残留農薬基準違反が発覚したが、出荷先が特定できず、全ての農産物を回収する事故が発生。

    【想定される対策】

    トレーサビリティが確保されているか、収穫記録、栽培・防除記録を使って照合可能か、日常的に点検する。
    辿ることができない記録を把握し、補充、追加する。
    回収対象の範囲と損失を考慮し、ロットの単位を決定する。
    出荷記録と紐づく調製作業、収穫記録、防除記録を作成し保管する。

    番号

    11-4

    【具体例】

    農産物へのクレームに対し、購買品と農場の農産物との判別ができず、原因を把握することができなかったため、次の納品でも同種の事故が再発。

    【想定される対策】

    出荷伝票、商品に識別可能な荷印をつける。
    商品、出荷伝票から農場、購買品、外部委託工程のある農産物の照合ができるようにする。
    トレーサビリティが確保されているか、記録を辿って確認する。

    SDGsへの貢献
    (17の目標、169のターゲット)

    2.4 生産性を向上させ、生産量を増やし、生態系を維持し、気候変動や極端な気象減少、干ばつ、洪水及びその他の災害に対する適応能力を向上させ、漸進的に土地と土壌の質を改善させるような、持続可能な食料生産システムを確保し、強靭(レジリエント)な農業を実践する。(即ち持続可能な農業を促進する。

    12.8 人々があらゆる場所において、持続可能な開発及び自然と調和したライフスタイルに関する情報と意識を持つようにする。(即ち持続可能な生産消費形態を確保する。

    国際水準GAP
    食料・農業・農村基本計画(令和2年3月閣議決定)に掲げる「令和12年までにほぼ全ての産地で国際⽔準GAPを実施」の実現

    このページの内容は、農林水産省「国際水準GAPガイドライン」を引用しています。
    下記URLに掲載されています。
    国際水準GAPガイドライン:農林水産省https://www.maff.go.jp/j/seisan/gizyutu/gap/gap_guidelines/index.html

  • 農場の基本情報に基づき、環境に負荷を与える要因を特定してリスク評価を実施し、リスクが高いと評価した事項について、リスクを低減・排除する対策を実施するための農場のルールの設定及びこれに基づく対策の実施、検証、見直しを実施。

    区分

    リスク管理

    農業生産工程段階

    全般

    品目

    共通

    分野

    環境保全

    番号

    10

    取組事項

    農場の基本情報に基づき、環境に負荷を与える要因を特定してリスク評価を実施し、リスクが高いと評価した事項について、リスクを低減・排除する対策を実施するための農場のルールの設定及びこれに基づく対策の実施、検証、見直しを実施。

    解説

    農業は土や水など地域の自然環境を活用して行う産業です。環境を汚染してしまうと安全な土や水を確保することができなくなる恐れがあり、持続的な農業経営が困難になりかねません。
    自らの農業活動が環境に対してどのような影響を及ぼすのかを評価し、環境保全に努めます。
    また、自然環境だけでなく、地域社会との共生といった社会的な環境についても配慮します。
    例えば、水の利用について水源の汚染を防ぐだけでなく、水利のルールを守る、地域の清掃活動に参加するなど、地域社会と良好な関係を築きます。
    周辺の方々と良好なコミュニケーションをとりましょう。
    具体的な取組の流れは下記のようになります。
    ① 農場の基本情報を確認し、周辺の環境や使用する資源を把握
    ② 環境汚染の起こりやすさ及び環境に対する悪影響の厳しさ※を考慮したリスク評価の実施
    ③ リスク評価に基づき、リスクが高いと評価された環境に負荷を与える要因を除去又は低減するための対策(農場のルール:施肥計画、廃棄物の処分方法等)を設定
    ④ 農場のルールの実施
    ⑤ 農場のルールの実施により環境負荷要因を除去又は低減できているか検証を実施、適切に除去又は低減できていない場合には②からやり直し
    ⑥ ほ場・施設・機械の変更、工程の変更等が発生した場合は②からやり直し
    ※ 「環境に対する悪影響の厳しさ」とは、取り返しがつかない、自然の回復力・復元力では修正できない、浄化能力を超えるなど、地域や水質、土壌汚染、地球環境に与える影響で判断します。
    また、リスクを低減するための対策は以下の 3 つを念頭に組み合せて立てましょう。
    ・事故が発生する確率を下げる。
    ・発生しても被害の範囲や重大性を小さくする。
    ・被害を補償、補塡、修繕する。(リスクが小さい場合、もしくは大きすぎて自らの管理を超える場合に導入される)
    近年、世界規模での気候変動が取り沙汰され、我が国でも自然災害が多発しています。
    自然災害による被害、環境影響を受けやすい農業だからこそ、自らの農場が環境破壊、汚染源とならない取組が大切です。
    番号 283240414244 等と合わせ、環境保全に努めましょう。

    具体例と想定される対策

    番号

    10-1

    【具体例】

    過剰な施肥で肥料成分が流亡し、水源汚染が発生。

    【想定される対策】

    土壌診断を実施する。
    自治体等の指針を入手する。
    土壌診断結果等に基づき、適切に施肥設計を立案する。
    施肥設計を遵守する。

    番号

    10-2

    【具体例】

    被覆資材の不適切な処分による、大気汚染と土壌への残留・残痕が発生。

    【想定される対策】

    劣化した肥料袋など、プラスチック類の放置、野焼きを行わない。
    廃プラスチック回収を適切に行う。
    中長期展張フィルム等による長期利用。
    生分解性マルチの利用。

    SDGsへの貢献
    (17の目標、169のターゲット)

    2.4 生産性を向上させ、生産量を増やし、生態系を維持し、気候変動や極端な気象減少、干ばつ、洪水及びその他の災害に対する適応能力を向上させ、漸進的に土地と土壌の質を改善させるような、持続可能な食料生産システムを確保し、強靭(レジリエント)な農業を実践する。(即ち持続可能な農業を促進する。

    12.4 合意された国際的な枠組みに従い、製品ライフサイクルを通じ、環境上適正な化学物質やすべての廃棄物の管理を実現し、人の健康や環境への枠組みを最小化するため、化学物質や廃棄物大気、水、土壌への放出を大幅に削減する。(即ち持続可能な生産消費形態を確保する。

    12.5 廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再利用により、廃棄物の発生を大幅に削減する。(即ち持続可能な生産消費形態を確保する。

    12.8 人々があらゆる場所において、持続可能な開発及び自然と調和したライフスタイルに関する情報と意識を持つようにする。(即ち持続可能な生産消費形態を確保する。

    国際水準GAP
    食料・農業・農村基本計画(令和2年3月閣議決定)に掲げる「令和12年までにほぼ全ての産地で国際⽔準GAPを実施」の実現

    このページの内容は、農林水産省「国際水準GAPガイドライン」を引用しています。
    下記URLに掲載されています。
    国際水準GAPガイドライン:農林水産省https://www.maff.go.jp/j/seisan/gizyutu/gap/gap_guidelines/index.html

  • 農場の基本情報に基づき、労働安全に関する危害要因を特定してリスク評価を実施し、リスクが高いと評価した事項についてリスクを低減・排除する対策を実施するための農場のルールの設定及びこれに基づく対策の実施、検証、見直しを実施。

    区分

    リスク管理

    農業生産工程段階

    全般

    品目

    共通

    分野

    労働安全

    番号

    9

    取組事項

    農場の基本情報に基づき、労働安全に関する危害要因を特定してリスク評価を実施し、リスクが高いと評価した事項についてリスクを低減・排除する対策を実施するための農場のルールの設定及びこれに基づく対策の実施、検証、見直しを実施。

    解説

    事業主や家族従事者、雇用している作業者が作業中に事故にあえば、経営に深刻なダメージを与えます。
    死亡や重傷事故が発生すれば、場合によっては、廃業せざるを得ない事態になりかねません。
    農作業事故の発生を防ぐためには、営農上に潜む危害要因(危険な場所・作業・もの・状態)や、危害の程度を把握し、それを踏まえた改善策を講じることが重要です。
    日頃から作業手順、作業環境等についてチェックを行い、作業方法の見直しや危険箇所の明示又は改善を行っていく必要があります。
    農場に被雇用者がいる場合、使用者(事業主=農場経営者)には「労働安全衛生法」により労働者に対して労働災害を防止する義務があります。
    「労働安全衛生法」は被雇用者のいない家族経営には適用されませんが、被雇用者のいる農場同様に自身、家族の安全を守るための活動を行うことが、農場を継続するために必要です。
    具体的な取組の流れは以下のようになります。
    ① ほ場地図など農場の基本情報を確認しながら農場内の危険な作業・危険な箇所、危険な機械・器具、危険物を抽出
    ② 過去の事故事例や農場内の事故経験などを参考に、労働災害の起こりやすさ及び健康に対する悪影響の程度を考慮した労働安全に関する危害要因のリスク評価の実施
    ③ リスク評価に基づき、リスクが高いと評価された労働安全に関する危害要因を除去又は低減するための対策(農場のルール)を設定
    ④ 農場のルールの実施
    ⑤ 農場のルールの実施により労働安全に関する危害要因を除去又は低減できているか検証を実施、適切に除去又は低減できていない場合には②からやり直し
    ⑥ ほ場・施設・機械の変更、工程の変更等が発生した場合は②からやり直しまたリスクを低減するための対策は、以下の 3 つを念頭に組み合せて立てます。
    ・事故が発生する確率を下げる。
    ・発生しても被害の範囲や影響度を小さくする。
    ・被害を補償、補塡、修繕する。(リスクが小さい場合、もしくは大きすぎて自らの管理を超える場合に導入される)
    農作業事故の減少に向けて、農作業安全のリスク管理に取り組むことが求められます。
    <具体的な取組事例>
    ・ 作業手順、作業環境や危険箇所についてチェックを行い、作業方法の見直しや作業現場の改善、危険箇所の表示等を関係者で情報共有しておく。
    ・ ほ場は、出入口について傾斜を緩く、幅を広くする。耕作道の曲がり角は隅切りにし、路肩や側溝はわかりやすくするために草刈りを行い、路肩が軟弱な場合は補強を行う。
    ・ 自ら所有していないほ場や公共の道路等のために改善できない場合は、危険箇所等に関する情報を従事者だけではなく広く関係者と共有する。
    ・ 危険性の高い作業を行う場合は、作業者の負担軽減や危険な状況を知らせる補助者を配置する等、一人で作業を行わないようにする。
    ・ やむを得ず一人で作業を行う場合には、作業内容や作業場所を家族等に伝えておく、携帯電話を必ず所持する等、事故が発生した際の早期発見のために必要な措置を行う。
    ・ 作業委託を行う場合は、受託者に対して危険箇所や注意事項等について事前に説明し、事故防止に努める。
    ・ 事故が発生する可能性が高いと感じた「ヒヤリ・ハット」事例や軽微な事故事例は、危害要因を把握し、対策を講じることができる貴重な情報である。原因を分析し、迅速に必要な対策を講じることで再発防止や未然防止に役立てることができる。また、これらを他の従事者と共有する。

    具体例と想定される対策

    番号

    9-1

    【具体例】

    トラクター等を傾斜地や段差のある危険な場所で使用し、転倒事故が発生。

    【想定される対策】

    十分な技量を持った者にのみ操作を許可する。
    事故が起こりやすい危険な場所を事前に把握する。
    物理的な障壁を設ける等、転落防止措置を講じる。

    番号

    9-2

    【具体例】

    耕運機の操作ミスによる挟み込まれ事故が発生。

    【想定される対策】

    十分な技量を持った者にのみ操作を許可。
    作業前に操作方法を再確認する。
    危険な作業を禁止する。
    安全装置付き耕運機を導入する。

    番号

    9-3

    【具体例】

    ほ場での一人作業の際に事故があり、発見が遅れ重傷化。

    【想定される対策】

    全員がどこで、何をしているか把握する方法を決め、戻り時間を決める。
    連絡方法と時間を決め、連絡がつかない場合の対処方法を決める。

    番号

    9-4

    【具体例】

    高温時に連続して作業を続けたため、熱中症が発生。

    【想定される対策】

    作業を中止する温度、湿度を決める。
    時間を決めて強制的に休憩を取り、水分や塩分を摂取する。

    番号

    9-5

    【具体例】

    風邪等での薬の服用によって眠気を催した作業者が機械操作でミスし、事故が発生。

    【想定される対策】

    体調不良の者は配置換え、作業制限を行う。
    服薬した場合の措置等を定める。
    体調等の記録を作成する。

    番号

    9-6

    【具体例】

    長時間作業により体力・集中力が低下し操作ミスにより事故が発生。

    【想定される対策】

    作業時間のルールを定める。
    機械操作時間の上限設定、交代要員の確保、適宜交代、適宜休憩を実施する。

    番号

    9-7

    【具体例】

    農産物や廃棄物の運搬時に、積載可能重量を超過した状態で公道を走行し、交通事故が発生。

    【想定される対策】

    積載可能重量を把握し、周知する。
    過積載走行を禁止する。

    SDGsへの貢献
    (17の目標、169のターゲット)

    8.5 若者や障害者を含むすべての男性及び女性の、完全かつ生産的な雇用及び働きがいのある人間らしい仕事、ならびに同一労働同一賃金を達成する。(即ち働きがいのある人間らしい雇用を促進する。

    2.4 生産性を向上させ、生産量を増やし、生態系を維持し、気候変動や極端な気象減少、干ばつ、洪水及びその他の災害に対する適応能力を向上させ、漸進的に土地と土壌の質を改善させるような、持続可能な食料生産システムを確保し、強靭(レジリエント)な農業を実践する。(即ち持続可能な農業を促進する。

    8.8 移住労働者、特に女性の移住労働者や不安定な雇用形態にある労働者など、すべての労働者の権利を保護し、安全・安心な労働環境を促進する。(即ち働きがいのある人間らしい雇用を促進する。

    国際水準GAP
    食料・農業・農村基本計画(令和2年3月閣議決定)に掲げる「令和12年までにほぼ全ての産地で国際⽔準GAPを実施」の実現

    このページの内容は、農林水産省「国際水準GAPガイドライン」を引用しています。
    下記URLに掲載されています。
    国際水準GAPガイドライン:農林水産省https://www.maff.go.jp/j/seisan/gizyutu/gap/gap_guidelines/index.html

  • 農場の基本情報及びコーデックス規格の HACCP の考え方に沿って、食品安全(品質を含む)に関する危害要因について危害要因分析を実施し、食品安全上のリスクが高いと判断した危害要因について、危害要因による汚染を防止・低減する対策を実施するための農場のルールの設定及びこれに基づく対策の実施、検証、見直しを実施。

    区分

    リスク管理

    農業生産工程段階

    全般

    品目

    共通

    分野

    食品安全

    番号

    8

    取組事項

    農場の基本情報及びコーデックス規格の HACCP の考え方に沿って、食品安全(品質を含む)に関する危害要因について危害要因分析を実施し、食品安全上のリスクが高いと判断した危害要因について、危害要因による汚染を防止・低減する対策を実施するための農場のルールの設定及びこれに基づく対策の実施、検証、見直しを実施。

    解説

    安全な農産物を提供することは、農場の責務です。安全でない農産物を出荷、販売等してしまうと、法令違反であるだけでなく、消費者に取り返しのつかない人的被害を与えてしまいかねません。
    重大な人的被害を出さないまでも、消費者や取引先に大きな損害を与えてしまい、農場の信用を大きく損なってしまいます。
    そうした事故の発生を未然に防ぐため、農産物の安全性を脅かす危害要因を検討し、消費者に健康被害が発生しないように管理します。
    農産物に関連する危害要因には、生物的(病原性微生物やノロウイルス等)、化学的(かび毒、重金属、残留農薬等)及び物理的(硬質異物等)なものがあります。
    危害要因分析では、農産物がどう消費されるかを考慮しつつ、その生産工程にどのような危害要因が潜んでいるか考えます。
    人や、土壌や水などの生産環境に由来するものや、農薬や堆肥などの生産資材に由来するもの、生産工程の中で発生しうるものを、生産工程に沿って列挙し、それらに対する管理手段を挙げていきます(既に行っている管理の振り返りと、追加すべき管理の検討)。
    危害要因分析の結果、重要な危害要因については、生産工程で危害要因による汚染を防止・低減するため、危害要因による農産物の汚染を防止・低減する対策を農場のルールとして策定し、作業者に対しルールを周知します。
    この際に、特に注意を要する管理点があれば特定し、更に測定可能な管理の基準がある場合には、その限界値を設定し、管理基準の測定方法を定めます。
    危害要因に関して、農産物中の最大基準値又は残留基準値が設定されている場合には、それを超えないような対策を策定し、周知します。
    実際にルールを運用してみて、記録や検査に基づいてルールが守られているかどうか確認するとともに、本当に危害要因による汚染を防止・低減できたのか対策の有効性を検証します。
    ルールが危害要因による汚染の防止・低減に有効でないと判断された場合、ルールを見直します。
    また、生産工程を変更した、新しい施設・機械を導入したなど環境に変化があった場合には、あらためて危害要因分析を行い、必要に応じてルールを見直します。
    農場に関連する食品安全上の危害要因の抽出・特定にあたっては、厚生労働省が作成しているガイダンスにある「原材料に由来する潜在的な危害要因」や農林水産省が策定している、優先的にリスク管理を行うべき有害化学物質、有害微生物のリストに掲載されている危害要因やそのリスクプロファイルも参照します。
    危害要因分析は、ほ場・倉庫・作業所等の場所ごと、土や水、農薬、肥料等の資材の保管や状態ごと、作業者や機械、器具等の関わりごとに、危害要因を抽出・特定し、食品安全上のリスクの大きさを推定しなければなりません。
    危害要因分析は、番号 1で把握した、商品仕様書、生産工程フロー図、地図・レイアウト図等を活用して実施します。
    この危害要因分析が適切でないと、本来、対策を強化すべき部分が脆弱になったり、逆に本来はそれほど対策を取らなくてよい部分に過剰な投資をしてしまったりということが発生します。
    想定される消費者の健康リスクの大きさや、食品安全上の問題が発生した際に生じる自らの経営上のリスクに見合った対策を取ることが必要です。
    危害要因分析(危害要因の抽出・特定、重要な危害要因かどうかの判断、管理手段の検討) → 危害要因による汚染の防止・低減対策の立案と実施 → 対策が有効に機能しているかの検証 → (必要に応じて)対策の見直しを繰り返し、食品安全上の管理体制を確立します。
    農業は、開放系の作業が多いため、生産環境に由来する危害要因の管理が特に重要です。
    また、悪意を持った者による意図的な危害要因の混入も考えられますので、食品防御(フードディフェンス)や食品偽装(フードフラウド)の観点も盛り込んだ管理を実施します。
    なお、農産物の種類ごとに、農林水産省、厚生労働省、都道府県、農研機構等から危害要因の管理のガイドラインや指針が発行されている場合には、それらを参考にして危害要因分析を行い、自らの農場の管理体制を確立します。
    危害要因分析を行ったら、農場における作業の様子や現場の実態と照合し、抽出した危害要因に漏れがないか、危害要因による食品安全上のリスクを過少又は過大評価していないかを確認しましょう。
    食品安全には直接影響しない、農産物の品質を損なう事故も、度重なれば農場の信用を失墜させます。
    品質を低下させる要因(砂の付着、毛髪やビニール片の混入、過熟、黄変など)についても上記と同じ手順で抽出し、要因分析、要因の発生防止・低減対策の検討、実行、見直しにより、品質事故を起こさない体制づくりを目指します。
    <参考>
    コーデックス規格:消費者の健康の保護、食品の公正な貿易の確保等を目的として、1963 年に FAO 及び WHO により設置された国際的な政府間機関であるコーデックス(Codex)委員会において策定された国際食品規格

    具体例と想定される対策

    番号

    8-1

    【具体例】

    加熱調理をする食品工場向け農産物なのに、生食用の農産物と同水準の衛生管理のための対策が取られ、不必要な投資が行われる。

    【想定される対策】

    意図する喫食の仕方を考慮した食品安全上のリスクを推定する。
    維持経費のかかる過剰な対応、投資をしない。

    番号

    8-2

    【具体例】

    作業所の天井からペンキがはがれ、異物混入が発生。

    【想定される対策】

    施設の状態について定期的に点検、修繕を行う。
    間接的に農産物を汚染する可能性があるものを含めて施設起因の危害要因を抽出する。
    実行可能な対策を検討する。
    施設内の壁、床、天井等に有害な物質が使用されていないか点検する。

    番号

    8-3

    【具体例】

    機械部品が脱落し、金属異物混入が発生。

    【想定される対策】

    関連する機械起因の危害要因を抽出する。
    機械の状態について定期的に点検、修繕、補修を行う。
    機械使用前後に取付け部品、接合部、ボルトやナット、ネジにゆるみ、脱落がないか確認する。

    番号

    8-4

    【具体例】

    作業員がケガをした際の血液が農産物に付着し、異物混入が発生。

    【想定される対策】

    作業員が農産物(収穫物)に触れる可能性がある工程を特定する。
    ケガをした際の対応を設定し、実施する。

    番号

    8-5

    【具体例】

    袋詰め工程で作業員に由来する病原性微生物の汚染事故が発生。

    【想定される対策】

    作業員が農産物(収穫物)に触れる可能性がある工程を特定する。
    農産物に触れる作業員に、手洗い、手袋着用、アルコール消毒など品目に合わせた衛生対策=ルールを設定し、実施する。
    対策を講じたことを記録する。

    番号

    8-6

    【具体例】

    悪意ある他者の意図的な操作により、農業用の井戸水に化学物質の汚染事故が発生。

    【想定される対策】

    悪意を持った他者が、農場やその関連施設に侵入する可能性を抽出する。
    ポンプ小屋などの関連施設に施錠等の対策を講じる。

    番号

    8-7

    【具体例】

    作業者が農薬の希釈倍数を間違えて使用したため、残留農薬基準違反が発生。

    【想定される対策】

    農薬に関する教育を実施する。
    使用方法に誤りがないか、検証する仕組み(番号 60 参照)を構築する。

    SDGsへの貢献
    (17の目標、169のターゲット)

    2.1 飢餓を撲滅し、全ての人々、特に貧困層及び幼児を含む脆弱な立場にある人々が一年中安全かつ栄養のある食料を十分得られるようにする。(即ち持続可能な農業を促進する。

    2.4 生産性を向上させ、生産量を増やし、生態系を維持し、気候変動や極端な気象減少、干ばつ、洪水及びその他の災害に対する適応能力を向上させ、漸進的に土地と土壌の質を改善させるような、持続可能な食料生産システムを確保し、強靭(レジリエント)な農業を実践する。(即ち持続可能な農業を促進する。

    3.9 有害化学物質、ならびに大気、水質及び土壌の汚染による死亡及び疾病の件数を大幅に減少させる。(即ちすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する。

    国際水準GAP
    食料・農業・農村基本計画(令和2年3月閣議決定)に掲げる「令和12年までにほぼ全ての産地で国際⽔準GAPを実施」の実現

    このページの内容は、農林水産省「国際水準GAPガイドライン」を引用しています。
    下記URLに掲載されています。
    国際水準GAPガイドライン:農林水産省https://www.maff.go.jp/j/seisan/gizyutu/gap/gap_guidelines/index.html

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