区分
栽培管理
農業生産工程段階
栽培
品目
共通
分野
環境保全
取組事項
病害虫・雑草が発生しにくい生産条件の整備(IPM における「予防」の取組)。
病害虫・雑草の発生状況を把握した上での防除要否及びタイミングの判断(IPM における「判断」の取組)。
多様な防除方法(防除資材、使用方法)を活用した防除(IPM における「防除」の取組)
解説
1.IPM について
IPM とは、Integrated Pest Management の略称であり、「総合的病害虫・雑草管理」などと訳します。
IPM は、
①病害虫・雑草が発生しにくい生産条件の整備(IPM の「予防」の取組)、
②病害虫・雑草の発生状況を把握した上での防除要否及びタイミングの判断(IPM
の「判断」の取組)、
③多様な防除方法(防除資材、使用方法)を活用した防除(IPM の「防除」の取組)を組み合わせて、化学農薬の使用量を必要最低限に抑えつつ、経済的な被害が生じる
レベル以下に病害虫・雑草の発生を抑制する方法です。
病害虫・雑草の発生状況に応じて、経済性を考慮しつつ適切な防除手段を総合的に講じることにより、農業者にとって農作物の安定した生産を確保できるというメリットがあります。
また、化学農薬に過度に依存せず、多様な防除手段を総合的に用いることにより、人の健康に対するリスクの低減、環境への負荷の低減による生物多様性の維持等の環境保全、薬剤耐性・抵抗性を持った病害虫・雑草の出現抑制にもつながります。
2.IPM の取組方法
IPM の取組方法としては、「予防」、「判断」、「防除」の 3 つの取組を基本に効果的・効率的な防除を行います。
それぞれの取組内容は以下のとおりです。
(1)「予防」の取組
IPM では、病害虫・雑草が発生しにくい生産条件の整備のため、「健全な種苗の使用」「病害虫の発生源の除去」に取り組むことが基本となります。
これらの取組に加えて、栽培する作物の種類、地域の実情を踏まえた取組等を可能な範囲で実施します。
<取組例>
・ 健全な種苗の使用(種子更新・種子消毒の実施、検定済み無毒苗木・種子の使用、病徴や徒長のない苗の使用等)
・ 病害虫の発生源(作物残渣、周辺雑草、寄主植物等)の除去
・ 抵抗性品種の導入
・ 土壌の排水性の改善
・ 土壌診断に基づく適正な施肥管理
・ 適正な栽植密度の管理
・ 輪作の実施
・ 緑肥の活用 等
(2)「判断」の取組
IPM では、病害虫・雑草による被害が生じると判断される場合に防除を行うことを基本として、「発生予察情報の活用」、「ほ場観察」により病害虫・雑草の発生状況等を把握した上で防除要否及びタイミングを判断します。
<取組例>
・都道府県や国、民間団体の発生予察情報※(発生予報、注意報、警報等)を活用することにより防除要否及びタイミングを判断
※病害虫の防除を適切なタイミングで経済的なものにするために農業者等に提供
される、今後、発生が多くなると予測される病害虫を効率的に防除できる時期等
の情報であり、国、都道府県は、発生予察事業において、病害虫の発生状況を調
査し、その後の病害虫の発生を予測し、発生予報、注意報、警報等により情報提
供しています。
・ほ場やほ場周辺における病害虫・雑草や天敵の発生状況を観察することにより防除要否及びタイミングを判断 等
(3)「防除」の取組
IPM では、化学的防除だけでなく、「物理的防除」、「生物的防除」など多様な防除方法を組み合わせることを基本として、粘着シート、天敵など化学農薬以外の多様な防除資材を活用し、適切な使用方法による防除を行います。
また、化学農薬の使用においては、可能な範囲で環境負荷の低減にも資する化学農薬を活用し、環境負荷の低減にも資する使用方法による防除に取り組みます。
(取組例)
①多様な防除資材の活用
・ 粘着シート、防虫ネット等の利用(物理的防除)
・ 天敵、微生物農薬等の活用(生物的防除)
・ 環境負荷低減の観点からのリスクの高い農薬からリスクのより低い農薬への転
換 等
②適切な使用方法による防除
・ 同一系統薬剤の連続使用を避けた農薬散布(ローテーション散布)
・ 農薬施用量の低減のためのドローン等を活用したピンポイント防除
・ 農薬散布時の飛散の低減のための飛散防止ノズルの活用 等
3.IPM の実践
IPM の実践にあたっては、PDCA サイクル(Plan(計画)、Do(実践)、Check(検証)、Action(改善)を繰り返すことで業務を改善する手法)により、毎年、取組方法の改善を図ることが重要です。
いつ、どのような取組を行ったか記録を残すようにしましょう。
また、病害虫・雑草の発生態様は、地域によって様々であり、地域の実情を踏まえた最適な防除手段を選択することが必要となります。
より地域に合った IPM の取組方法については、各都道府県の普及指導センター等に相談してください。
具体例と想定される対策
番号
49~51
【具体例】
病害虫・雑草の発生・まん延により、収量が大幅に減少。
化学農薬のスケジュール散布や化学農薬のみに依存した防除により、環境負荷が増大。
薬剤耐性・抵抗性を持つ病害虫・雑草が出現。
【想定される対策】
「予防」、「判断」、「防除」を組み合わせた総合的病害虫・雑草管理を実施します。
<予防の取組例>
・ 健全な種苗を使用する。
・ 病害虫の発生源となる作物残渣、周辺雑草等を除去する。
・ 抵抗性品種を導入する。
・ 輪作体系に取り組む。
<判断の取組例>
・ 発生予察情報の活用やほ場観察により病害虫・雑草の発生状況に応じて防除要否及びタイミングを判断する。
<防除の取組例>
・ 化学的防除だけでなく、生物的防除、物理的防除などの多様な手法を組み合わせた防除を行う。
・ 同一系統の農薬の使用を避け、ローテーション散布を実施する。
SDGsへの貢献
(17の目標、169のターゲット)
病害虫・雑草が発生しにくい生産条件の整備(IPM における「予防」の取組)。
2.4 生産性を向上させ、生産量を増やし、生態系を維持し、気候変動や極端な気象減少、干ばつ、洪水及びその他の災害に対する適応能力を向上させ、漸進的に土地と土壌の質を改善させるような、持続可能な食料生産システムを確保し、強靭(レジリエント)な農業を実践する。(即ち持続可能な農業を促進する。)
12.4 合意された国際的な枠組みに従い、製品ライフサイクルを通じ、環境上適正な化学物質やすべての廃棄物の管理を実現し、人の健康や環境への枠組みを最小化するため、化学物質や廃棄物大気、水、土壌への放出を大幅に削減する。(即ち持続可能な生産消費形態を確保する。)
病害虫・雑草の発生状況を把握した上での防除要否及びタイミングの判断(IPM における「判断」の取組)。
2.4 生産性を向上させ、生産量を増やし、生態系を維持し、気候変動や極端な気象減少、干ばつ、洪水及びその他の災害に対する適応能力を向上させ、漸進的に土地と土壌の質を改善させるような、持続可能な食料生産システムを確保し、強靭(レジリエント)な農業を実践する。(即ち持続可能な農業を促進する。)
12.4 合意された国際的な枠組みに従い、製品ライフサイクルを通じ、環境上適正な化学物質やすべての廃棄物の管理を実現し、人の健康や環境への枠組みを最小化するため、化学物質や廃棄物大気、水、土壌への放出を大幅に削減する。(即ち持続可能な生産消費形態を確保する。)
多様な防除方法(防除資材、使用方法)を活用した防除(IPM における「防除」の取組)
2.4 生産性を向上させ、生産量を増やし、生態系を維持し、気候変動や極端な気象減少、干ばつ、洪水及びその他の災害に対する適応能力を向上させ、漸進的に土地と土壌の質を改善させるような、持続可能な食料生産システムを確保し、強靭(レジリエント)な農業を実践する。(即ち持続可能な農業を促進する。)
3.9 有害化学物質、ならびに大気、水質及び土壌の汚染による死亡及び疾病の件数を大幅に減少させる。(即ちすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する。)
12.4 合意された国際的な枠組みに従い、製品ライフサイクルを通じ、環境上適正な化学物質やすべての廃棄物の管理を実現し、人の健康や環境への枠組みを最小化するため、化学物質や廃棄物大気、水、土壌への放出を大幅に削減する。(即ち持続可能な生産消費形態を確保する。)
栽培管理
信頼できる供給元からの適正な手段による種苗の入手、育苗の管理及び種苗の調達に関する記録の保管。
農業における健全な種苗(種子、苗、種菌)の入手、育成は経営上、重要な工程です。 種苗の入手・育苗を管理、記録し、見直せるようにすることが大切です。 また、育苗品種を指定して育苗を外部委託している場合に… 「続きを読む」
隣接ほ場からの農薬ドリフトの影響の回避。
農薬の工程管理を検討する上で、自らのほ場・農産物に対し、周辺で使用される農薬からの影響があるか、ドリフトの危険性について調べます。 ドリフトの影響が懸念される場合には、周辺の農薬使用者とコミュニケーシ… 「続きを読む」
病害虫・雑草の対応(IPMにおける「予防」、「判断」、「防除」)
IPM とは、Integrated Pest Management の略称であり、「総合的病害虫・雑草管理」などと訳します。 IPM は、 ①病害虫・雑草が発生しにくい生産条件の整備(IPM の「予防… 「続きを読む」
使用する予定の農薬の情報をまとめ、使用基準違反を防ぐ農薬使用計画を策定。
農薬を使用する際には、「農薬取締法」に基づく登録を受けたもの、かつ、有効期限内のものを使用する必要があります。 食品の安全を守り、周辺環境に配慮して農薬を適正に使用するため、まず、農場で使用する予定の… 「続きを読む」
農薬使用計画に基づき、適正に農薬を使用するとともに、使用前に使用濃度や散布方法など、適正な使用方法の再確認を実施。
農薬を使用する際には、農薬ラベルに適用作物、使用回数、使用量、希釈倍数、収穫前日数、使用上の注意事項や被害防止方法等が記載されていますので、必ず確認しましょう。 「農薬取締法」では、容器又は包装にある… 「続きを読む」
農薬は、周辺環境を汚染しない場所で必要な量だけ調製し、使用した計量機器等の洗浄を適切に実施。
散布作業前に、防除の準備を整えます。 まず、防除器具等が適切に動作するか、事前に確認し、詰まりや前回使用した農薬が残っていないか点検します。 次に、農薬の調製時は最も濃度が高い、原液に接触する危険があ… 「続きを読む」
農薬散布時における周辺作物・周辺住民等への影響の回避。
農薬散布時に、隣接するほ場等の作物に農薬がかかると、作物の生長に悪影響が出たり、残留農薬基準値の超過の原因になったりする可能性があります。 また、周辺の民家等へ農薬が飛散してしまうと周辺住民に健康被害… 「続きを読む」
農薬の容器等の表示内容を確認し、表示に基づく安全な作業を行うための装備を整え、調製、防除、片付け作業を行い、防除衣、保護装備等を適切に洗浄、乾燥し、他への汚染がないように保管。
農薬によっては、農薬散布液を吸引したり、皮膚に付着したりすると健康被害が発生する恐れがあります。 したがって、農薬容器又は包装にあるラベルの表示内容を確認し、表示内容に基づく安全に作業を行うための服装… 「続きを読む」
農薬使用前に防除器具を点検し、使用後に適切に残液を処理、十分に洗浄し、洗浄排液を処理。
防除作業の前には、防除に使用する機械・器具を点検します。正常に稼働するか、通水できるか、撹拌機に故障はないか、試運転を行います。 防除機械・器具が正常に稼働しないと、計算値より濃度が高くなったり、飛散… 「続きを読む」
農薬の使用記録の作成・保存。
農薬を使用する者が遵守すべき基準を定める省令(平成 15 年農林水産省・環境省令第 5 号)では、農薬使用者は、農薬を使用した時は、次に掲げる事項を帳簿に記載するように努めなければならないと定めていま… 「続きを読む」