栽培管理【11】(59)

取組事項

食品安全(容器移し替え禁止、いたずら防止の施錠等)、環境保全(流出防止対策等)、労働安全(毒劇・危険物表示、通気性の確保等)に配慮した農薬の保管、在庫管理の実施。

解説

農場では、第三者が農薬を持ち出し、悪用することを防がなければなりません。さらに、作業者が保管庫から間違った農薬を取り出して使用することがないよう、誤使用を防ぐことも必要です。
そのため、強固で、十分な大きさの農薬保管庫を用意し、鍵をかけ、識別・分別して保管します。
特に、毒物や劇物に該当する農薬については、それぞれを区別した上で、鍵をかけて保管、管理しなければなりません。
また、危険物に指定される農薬(油剤、乳剤など第○石油類に分類される農薬等)については、消防法に従った管理(危険物表示の実施、消火設備等の用意など)が要求されます。
また、保管中や使用に際して、農薬の容器が倒れて中身がこぼれ、他の農薬と混じる、汚染する、周囲に流出することがないよう、密封し、漏れ防止の対策を講じます。
これが「盗難防止」「誤使用防止」「混入や汚染の防止」の原則です。
万が一、残留農薬基準の超過が発生した際に、農薬の使用記録だけでなく、農薬の在庫記録があると適正に農薬を使用したことが証明しやすくなり、後から検証する際にも役立ちます。
また、農薬の在庫を管理すると無駄な購入を防ぐことができます。
具体的な保管の仕方としては、下記のような方法があります。
① 農薬を農薬保管庫外に放置しない。
② 農薬保管庫の鍵を農薬に関する責任者が管理し、常に施錠を行い、責任者の許可なく農薬を持ち出せないようにする。
③ 毒物・劇物の保管については、行政の指導に従う。具体的な指示のない場合は、棚を分ける、別の保管庫に入れるなど他の農薬と明確に区分できる場所に保管する。毒物・劇物の容器及び被包に「医薬用外毒物」又は「医薬用外劇物」の表示を行い、保管場所にも同様に表示を行う。
④ 発火性又は引火性を有する危険物に該当する農薬については、危険物に該当しない農薬と分けて保管し、火気厳禁などの危険物表示を行う。
⑤ 保管庫内は農薬ラベルを確認できる程度の明るさを確保する。暗いと感じる場合は懐中電灯などを用意する。
⑥ 立入可能な保管庫の場合、換気口を設置する、出入り口を開放状態にしておけるようにするなど、通気性を確保する。
⑦ 農薬は購入時の容器のままで保管する。誤飲の原因となるためペットボトル等、飲食料品の容器への移し替えは行わない。
⑧ 最終有効年月を過ぎた農薬は誤使用を防ぐために区分して保管し、廃棄物処理業者へ依頼すること等により適正に処分する。
⑨ 使いかけの農薬は流出を防ぐためしっかり封をする。
⑩ 容器の転倒・落下による流出を防ぐため、穴のないトレーに入れるなどの流出対策を行う。
⑪ 農薬流出に備え、農薬専用の箒、ちりとり、ごみ袋、吸着シート等を用意する。
⑫ 入庫ごと、出庫ごとに在庫台帳にて記録、管理する。
⑬ 定期的に棚卸を実施する。
⑭ 農薬保管庫内に、農薬以外のものを置かない。
これらのことを遵守し、誤使用や汚染、いたずら等を防止して食品安全を、流出防止対策により環境保全を、毒物・劇物の適正な保管による労働安全を確保します。
適切に保管、在庫管理し、農薬に起因する様々な事故のリスクを低減します。

具体例と想定される対策

番号

59-1

【具体例】

残留農薬基準の超過の際に、適正に使用したことを証明できない事案が発生。

【想定される対策】

農薬の在庫記録により、過剰に使用していないことを確認する。
定期的に棚卸を実施する。

番号

59-2

【具体例】

農薬を重複して購入し、経済的な損失が発生。

【想定される対策】

在庫管理に基づき、農薬を購入する。
定期的に棚卸を実施する。

番号

59-3

【具体例】

在庫が過剰になり、最終有効年月の過ぎた農薬が大量に発生。

【想定される対策】

在庫管理に基づき、農薬を購入する。
定期的に棚卸を実施する。

番号

59-4

【具体例】

農薬のほ場等への放置により、農産物を汚染する事故が発生。

【想定される対策】

農薬は農薬保管庫に入れる。
定期的な巡回により、農場内に農薬が放置されていないか確認する。

番号

59-5

【具体例】

地震等により保管庫内で農薬が転倒、他の農薬を汚染する事故が発生。

【想定される対策】

トレー等を設置して農薬が流出した際の対策を講じる。
こぼれた農薬を処理する専用掃除用具を準備する。

番号

59-6

【具体例】

ペットボトルに移し替えた農薬を飲料水と間違えて飲用する事故が発生。

【想定される対策】

農薬は購入時の容器のままで保管する。
農薬の希釈液もペットボトルやガラス瓶などの飲料品の空容器等に移し替えない。

区分

Ⅵ栽培管理

農業生産工程段階

栽培

品目

共通

分野

食品安全
環境保全
労働安全

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